名古屋 栄 中日ビル
名古屋を代表するビルというと「大名古屋ビルヂング」「中日ビル」「都ホテル」「明治屋」など、昭和レトロから続く市民に親しまれた建物が多かった。しかしいずれの建物も耐震性を問われてどんどんと町並みから消えてゆく。中日ビルは1966年の開業から、森光子の放浪記などをロングランした「中日劇場」、事務所を置いている「中日ドラゴンズ球団」などを抱え、栄の待ち合わせ場所としても知られている。50年以上続いたこの建物も2019年3月で閉館し、数年後には新しい中日ビルができることになった。小生も幼い頃からこのビルには親しみがあって、特にその屋上にある回転レストランも無くなってしまうことは寂しいかぎり。
回転レストラン ばるーん
開業当時からあったものかどうか不明ではあるが、2000年頃まで営業していた回転レストランのばるーん。小学生の頃に両親に連れてきてもらったことがあって、ゴージャスな内装と食事が鮮明に記憶に残っている。遊園地の回転カップですら感動するのに、床が動いてご飯を食べるなんてスペシャルな出来事はビックリだったんだろう。
ひろしま国際ホテル(広島経済新聞Webより)
インターネットで探しても、このばるーんの画像や資料が出てこない。現役で活躍中のひろしま国際ホテルのレストランの画像を挙げてみたが、小生の記憶をたどるとこのような雰囲気であったように思える。中央の回転しない厨房と回転する客席の間には明瞭な境界があって、じっくりみていると動いているのがよく分かった。ばるーんの規模も広さもこれくらいだったんだろう。
ビアガーデンが置かれた屋上からさらに上に回転レストランが作られている。屋上からレストランには階段を上がってたどり着いたはずだが、その階段はプライベート空間で立ち入ることは出来なかった。屋内はライトアップされていて今でも営業できそうなくらい管理されている。ほどなく取り壊しになって、回転レストランを間近に見るのも最後、時代の移り変わりと自身の齢の変化を実感する。
中日ビル ビアガーデン
さてさて、ここにやってきたのは、病院の納涼会ビアガーデンに参加すること(^^)。病院スタッフの約半数と調剤薬局のスタッフ、委託給食会社のスタッフなどなど、総勢60名ほどの参加となって今年も賑やかな企画になった。
ここがいいのは開閉できる屋根があることだ。雨が降ったらどうしようなんて心配を幹事がしなくて済む。キリンビールの銘柄が選べて、ソフトドリンクなども充実している。ビアガーデンといったら揚げ物中心ときまっているんだろう、料理はこんなものと納得すべきで期待してはいけない。
家族で来てくれた職員もいて、初めてのビアガーデンと夜景にお子さんも喜んでくれたようだ。背景にはライトアップされた「テレビ塔」、こんな派手な照明だったっけ??
「サッポロビール浩養園」「マイアミ」「丸栄百貨店」「名鉄百貨店」などが名古屋では知られたビアガーデンがあるが、立地の良さや会場の清潔感から小生はここのビアガーデンが好きだった。これまで、毎年楽しませてくれてありがとう!!
H30.5.10 更新 中日ビルさよなら企画
いよいよ閉館まで1年を切り、現状の中日ビルを訪ねてみた。「中日ビルさよなら企画 ビルなつかし写真展」が開かれていて幾つかの興味ある画像を手に入れた。
ビルなつかし写真展
1階の東特別展示室でキャプション付きのパネル展示がおこなわれていた、規模は小さくて50枚ほどのものであったが、当時の写真が少ないので小生にとっては興味ある展示だった。
中日ビル建設時の模型
屋上や回転レストランの形状がよく分かる。目的が分からないが、屋上のステージのようなひな壇はもともと作られていたことが分かる。
昭和39年12月
鉄骨が組み上がってきた中日ビル。キャプションでは掘り出した膨大な土砂で港区にある池が埋め立てられて宅地になったそうだ。
昭和40年7月
回転レストランの骨組み作業が始まる。屋根にあたる部分の鉄鋼組みの写真だろう。屋上から北西の方角に向けられた写真は、100m道路の地下鉄工事中を右隅に映し出している。
回転レストラン ばるーん オープン日
1966年4月29日の開店日には、150席の回転レストランはすぐに満席に。周囲に高いビルがないので、地上53mからの展望が好評を博した。回転レストラン内の貴重な写真、これをみると窓際と内側に4人掛け席の2列でテーブルが配置されていることが分かる。窓際テーブルが人気であったことは想像に難くない。
屋上ビアガーデン
昭和60年7月撮影。30年後の現在と比べても、ビアガーデンの雰囲気は全く変わっていない。当時は回転レストランの屋根に点灯式の中日ビルネオンが立っていたが、現状は撤去されている。撤去された看板は、現在の屋上階のフェンスに取り付けられているモノと同じかも知れない。
昨年に続き営業最終となるこの夏も職場のみんなでビアガーデンにいってきた。土曜日ということで席は満席、ずいぶん前に予約してあったら雨が降っても大丈夫なテント席を押さえることが出来た。まずは気になっていた回転レストランはちゃんと現存。いよいよ最後なんだから、この回転レストラン ばるーん を懐かしむ人のためにも、屋内を開放してくれてもいいのになあ。
ビアガーデンのエレベーターフロアの奥には、回転レストランへの階段がある。知らなければただの階段室にしかみえない。営業していた当時はエレベーターを降りてから階段までの案内看板が並んでいた。
扉の向こうには階段があって、これを上ればレストランの入り口だ。幼いながらにも、エレベーターでレストランまで行けないことを不思議に思った覚えがある。今にして思えば、回転するレストランなのだから、その中にまでエレベーターを設計するには構造上で無理だったんだろう。柵で閉鎖されてはいるが、いまも階段や手すりはきれいだった。
2018 中日ビル屋上ビアガーデン
このところの名古屋は猛暑。40℃近い都会の大気は日が落ちてもどっしりと居座っていた。おかげでビールの冷え冷えが余計にのど越しをよくしてくれる。ビール大好きなスタッフが集まったいるので、今宵もみな、しこたま飲んでいた。ここで生ビールが飲めるのももうすこしでおしまい、9月24日で閉店だ。新しくなる中日ビルにはビアガーデンの設定がないと聞いている。名残惜しんでみんなで騒いだ。
H30.9.24 更新 さよならビアガーデン
2018年9月24日、とうとうビアガーデンも店じまいする日がやってきて、家族で最後を見届けにビールを飲みに訪れてみた。テント席を予約しようとしたら、閉店ラスト2時間の枠が取れたので開始は遅い8時半から。
満員御礼になっているのかと思いきや、すでに帰ったお客さんも居るだろうが、7割くらいの席の埋まり具合だった。なんだか拍子抜け。さみしいな〜。
中日ビルは2019年春に閉鎖される予定だけど、屋上にあがることが出来るのもきっと今日が最後だろう。交差点角から栄錦方面の景色も見納め。
ビール注ぐおにいさんにも無理矢理ピースをさせてしまう。ごめんなさい。
回転レストラン「ばるーん」も近くから見ることが出来るのも、これで最後。お名残惜しゅう。
ビル全体を一望出来るとこまで、テクテク。屋上の賑やかな灯りもこの日でおしまい。50年以上愛されてきた中日ビル、お疲れでした。ぜひ、また名古屋を代表するようなビルに生まれ変わることを期待だ。
ビアガーデンの出口では、記念品が配られた。名古屋の老舗和菓子の両口屋のスペシャルどらやきだった。
中日ビルの中をぶらぶらしてみた
地下2階ビル入り口
栄の地下街から中日ビルにくるとこの吹き抜け空間が出てきたら中日ビルに入ったことの証。手前には老舗の味噌煮込みうどん、踊り場には昔から花屋さんがある。地下2階部分はレストラン街、地下1階部分は八百屋さんがあったりと食品売り場風になっていた。
1階エントランス天井壁画
巨大なモザイク「夜空の饗宴」は矢野六郎の作品、CBC会館の壁画、丸栄西壁、旧新幹線口など、かれは当時の名古屋市内でモザイク画を幾つか残している。改装ではこのモザイク絵も失われてしまう。
2階
中高齢の女性をターゲットにした服飾や装飾、趣味の店がならぶ。階上にある中日劇場に芝居を見に来るような人たちを対象にしているのか、香を焚いた「かおり」がいつもしている。すでに引き上げたテナントもあって、寂しいたたずまい
地下駐車場
父がよく停めていたことを思い出す地下駐車場は、入庫の管理の仕方がおもしろい。ゲートで駐車すべき階と場所が書かれたカードを受け取って、クルマを指定された場所に停めるってわけだ。ずーっとこのやり方で管理されていて、なんとまあ、手の込んだ、昔ながらの方法なんだろう。
おまけ
中日ビルの外観を撮るために、お隣の三越デパートの屋上に上がってみた。幼稚園の頃、デパートの屋上は子供達にとって「楽園」であったと思う。両親と日曜にデパートの屋上遊園地で遊び、大食堂で「お子様ランチ」を食べて付属の「日の丸」を自慢げに家に持ち帰るという、一連の過ごし方は、小生にとって最高のイベントだった。それに反し、現状の屋上遊園地は廃墟のようだ。まずは人の姿が見当たらない、粗大ゴミのような動物の張りぼてや動きそうも無い乗り物。。。
栄 三越百貨店 屋上遊園地
現在の観覧車(Hideto Uchiikeさん動画より)
1954年 オリエンタル中村 観覧車(中日新聞Webより)
昭和41年7月 広小路の屋台(昭和48年3月で廃止)
都会で育った小生は街の喧騒の中で大きくなった。まさに昭和レトロな建物、デパートの屋上遊園地などは幼い記憶に刻まれているが、すこしづつその風景も失われようとしている。懐古趣味はどうよって思うけど、この現実は残された小生のかすかな「記憶」をも消してしまいそうだ。
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