
3日目行程

R191
朝食を早くにお願いして、雨が降り出しそうな中を東に向かって走り出す。宿泊予定の温泉津温泉(ゆのつ)まで、主立った観光先は石見銀山くらい。なのでほぼ下道の200kmを移動することがメイン。平日の通勤時間帯でも主要道路のR191はスムーズにクルマが流れている。

石州瓦
ずっと思っていたんだけど、山陰の民家は判を押したように赤い瓦で葺かれている。山口から島根まで不思議なくらいに同じだった。後学で調べると「石州瓦」と言うそうで、このあたりで作られる瓦で独特の赤褐色をしており寒い地域に強い特色があるそうだ。出雲でとれる鉄を含んだ石を釉薬に使っているからこのような色になるのだ。
萩駅
俵山から1時間ほどで萩の市内に入ってきた。小生は町に入ればまずは駅に寄ってみることが多い。観光案内図を見ることが出来るし、その町の雰囲気がよく伝わるのが駅だと思うからだ。萩の町は高校の修学旅行できただけ、だから当時を思い出せるか楽しみだ。


萩 城下町
萩の観光スポットで世界遺産にもなっている城下町、バイクを止めて散策をしてみる。修学旅行では自転車で走った覚えがあるが、景色は全然思い出せなかった。平日の午前ということもあり、とても静かに見て回ることができた。高杉晋作や木戸孝允など幕末から維新にかけての蒼々たる人たちの実家が近所と言ってよい範囲に点在している。軒先には夏みかんが方々に植えられて実をつけているが、さすが発祥の地だ。お寺の境内で窯元が観光客相手に萩焼を並べてたので、自分のお土産のつもりでコーヒーカップをじっくりと選んでみた。


松陰神社
城下町を散策後、市営駐車場のひとにお薦めの萩の観光スポットを尋ねると強く松陰神社を勧められる。ならば行きましょうと訪ねてみた。明治40年に松下村塾出身の伊藤博文や野村靖が中心となって、吉田松蔭を祭る公の神社として創建しようと山口県に請願書が提出された。こうして出来たのが松陰神社、個人を祭る神社は全国でも数少ないだろう。
松下村塾
境内には幽閉時代の松蔭が後に維新につながる久坂玄瑞・高杉晋作・伊藤博文・山縣有朋など小生でも知っている歴史上の弟子を教えた塾の建物が残っている。西洋を知りたくて浦賀にやってきたペリー艦隊に忍び込んで危うく死罪になりかけた逸話など、吉田松陰は歴史変革の中で突出した人物だった。治政側から見れば「テロ」、維新側からは「革命」、最後は老中暗殺を画策した罪で29才の若さで斬罪された。駐車場のおじさんが強く推しただけあって、吉田松蔭が地元の萩の人たちから愛されているのかがよく伝わってきた。
北長門北浦海岸
萩から次の大きな町の益田までの約60kmは、左手に海を見せながらR191がずーっと続いている。風が強いので波が高くGLばあさんにまで塩水がかかってくる。かなり寒い、着込めるだけ羽織って走り続ける。
ゆとりパークたまがわ
景色があまりに単調すぎて睡魔に襲われる。萩からまだ1時間も走っていないのだが、危険を感じて道の駅に飛び込む。施設の中は暖房が効いて心底ホッとする。バイク旅を続ける時に、道の駅は本当に助かる休息所。トイレも済ませ指先が少し温まったので、さあ先を急ごう。

しまねおさかなセンター
益田の先は自動車道も部分的に開通していて、少しは風景に変化が出てきて元気も出てくる。お土産物はどこかの海鮮、特にこのあたりの美味しい魚の干物を送ろうと思っていたので、浜田港にあるしまねおさかなセンターで物色する。珍しいサワラの干物が手に入るかもと期待していたのだが、見つからない。東海地方ではまずはお目にかからない「甘鯛」にも引かれたが、気に入ったモノがなかったので、お次に期待してみるだけ〜〜。


石見銀山世界遺産センター
この日の主な観光地、石見銀山に到着。薄日が差すお昼頃、やっと暖かさも出てきて気分も晴れる。まずは予習のつもりで石見銀山世界遺産センターを見学。スタッフの人たちはとても丁寧でお持てなしを感じる。展示はたっぷりあって、とりわけ銀を求めて地中深く掘り続けられた坑道の立体模型は分かりやすかった。この模型を作るのは大変だったろうなあ〜。


石見銀山 大盛の町並み
遺産センターは石見銀山の中心地より離れていて、ハイシーズン中は遺産センターからシャトルバスでアクセスする事になる。この日は平日でもあり、最も便利の良い銀山公園の駐車場まで入ることが出来た。入り口の大森地区は江戸時代からの町並みがのこる伝統的建造物群保存地区で、銀山で栄えた当時を伝えている。


銀山公園の駐車場からは、ひたすら歩く。川沿いに上がって目の前のお山全体が鉱山になって、銀を掘っていた人たちが住んでいた集落跡が山の斜面に散在している。すべてを見ようとすれば5,6kmは歩くことになるだろう。そのためか、レンタル自転車で飛ばしている人たちもいる。時間もあるので「てくてく」早春を感じる小径を味わう。


新切間歩(まぶ)
ふもとの町から最も近いところにある坑道入り口。奥からはキレイな清水がとうとうと流れていて、地下水の排水用とも書かれてあった。どうにか入れるくらいの坑道が無数に有り、入り口だけでも500を越えるようだ。この先には実際に入ることの出来る龍源寺間歩があって、石見銀山の観光必須ポイントなんだけど、のんびり歩きすぎて時間切れ、以前に訪れたことはあるので今回はここで折り返した。ここの散策は自転車を使ったほうが、ベターだな。

温泉津駅(ゆのつ)
まだ日があるうちに宿泊地の温泉津温泉に到着。ここには九州旅行の帰りにクルマで立ち寄った小生お気に入りの温泉だ。名古屋からもしも近ければ、定期的に入浴してみたいほどお湯がいい。

駅を通り過ぎると温泉津の港となって、入り江の平地にできた小さな温泉地に至る。集落の入り口にはレトロ感たっぷりの温泉看板がたっている。日本津々浦々、温泉地の入り口には形は様々なれど、似たような目的で看板やゲートが作られていることが多い。




温泉津 沖泊
温泉津は石見銀山とも深く関わっており、銀山から採れた鉱石は山越えしてこの温泉津の港に運び込まれここから船で搬出された。沖泊は温泉津温泉のひと峰こえた先の入り江で、ここも採掘が盛んであった江戸時代まで搬出港として、また北前船が帰港する商業港として栄えたところ。
小生はこの寂れてひとけの少ないこの入り江が気に入っていて、この旅行でも宿に着くまえに寄ってみた。特徴的な2階建ての家屋が並んで、当時は相当に賑わった港であったが、現在は10世帯ほどの人口になっているらしい。
ドローンを携帯していたので、上空からの撮影をしてみた。新調した今回のドローンはスマホのアプリでコントロールできることと、飛行中の画像もリアルタイムで見れるようになったのがよくなった点。しかしドローンが絶えず自立で姿勢を整えるために、動画はブレのようにその動きが反映されてしまい今ひとつ。静止画を穫るだけであれば、これで十分だ。これ以上の性能は「トイドローン」に求めては無理だろう。

沖泊恵比須神社(現在)

沖泊恵比須神社(8年前)
沖泊の入り江の 斜面に非常に古びたお堂が建っている。8年ほど前に訪れた時にも相当に気になった建物だ。石見銀山史跡内で最古級の恵比須神社本殿、沖泊の繁栄を今に伝える貴重な社で世界遺産としては重要な遺構なんだろう。港の玄関にあって長く航海の安全を祈願されてきたに違いない。
当時は今にも崩れそうな朽ち具合でつっかえ棒が痛々しかったが、現状は修復されたようで凜と建っていた。手入れをしてもらえてよかったねえ。

温泉津 庄屋屋敷
毛利元就の家臣で初代奉行として温泉津にやってきた内藤家の屋敷。その後代々庄屋を務め、回船問屋や酒屋なども営んできたという内藤家400年の歴史を伝える屋敷と土蔵群。個人所有のため非公開。

温泉地のメインストリートもそこそこ狭いが、一つ路地に入るともっと狭かったり急な坂だったり。今日のお宿もこの坂を登ったところ。

温泉津温泉 中野屋
さてさて無事に今日もお宿に着いたよ。外湯が近く、小さなお宿が密集していて温泉津温泉の中心。そもそもホテル規模のお宿が一切無いところが温泉津らしくていい。

元湯
温泉津は基本的に外湯形式で、源泉の元湯がここの中心だ。朝6時から夜の8時まで、370円で強烈な温泉を体験できる。

温泉津のお湯は含土類食塩泉、つまり鉄分の多いしょっぱいお湯。源泉が49度なのだが、地元の人はこれをそのまま?湯船に入れているかもと思えるほどの熱いお風呂。真ん中の湯船には「ぬるめ」と書いてあるが、それでも42~43度はある。熱めが好きな小生でもちょっと刺激的だ。さらに右側の湯船には「あつめ」とあって48度の標示!! やけどする一歩手前、入っても1,2分が限度。
常連客が思い思いの姿で体を洗ったり、湯船に入ってくつろいでいる。さすがに地元の人でもあつめに長湯はしないようだ。野沢温泉や草津温泉、四万温泉などの高温源泉をもつ温泉地の共同浴場では、たいていの場合「あつめ」の温度設定だ。

長命館
元湯が経営していたお宿で、小生も前回来たときにはお世話になった。昨年秋から廃業してしまったようで、木造の螺旋階段がよかったなあ。


薬師湯
1300年の歴史があると言われる温泉津だが、明治5年の地震がきっかけで、新たに源泉が出来た。これが薬師湯でこのお湯が各宿の内湯として配布されている。元湯とほぼ同様の成分だけど、源泉の温度がやや低いので、こちらのお湯はちょいあつめ程度で、万人受けするお風呂。湯船は鉄分やカルシウム、石灰成分が沈着して鎧のようになっている。お湯は潤沢で指根から蕩々と掛け流しだ。

中野屋
中野屋さんは昭和10年からの創業で、昔ながらの旅館の風情。食事内容で料金が3種類、小生はもっともお手軽な設定の宿泊代。料理も多からず少なからず、ひとり旅ならこれで十分だ。
しかしここも、冷蔵庫、自販機の備わっていないお宿、なので食事時にしこたま日本酒を頂いた。
追加注文する都度、女将さんと昨今の温泉地のかかえる問題をお話することが出来た。よくよくお話をしてみると、まるで温泉宿の主にでもなったかのような気分になった。
もう一度、外湯に浸かってビールを飲んで、あとは寝るだけ。玄関を塞ぐようにGLばさんが休息中。今宵もお宿は小生ひとり、しずかな夜だ。
その4/5に続く

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