梅雨明け、晴天というよりは熱中症、製造日といっていいような休日、GLばあさんを引っ張り出してどこかへ走りに行こうと家を出た。早朝の出発が出来なかったから、温泉立ち寄りがてら近めの奥美濃、板取方面へバイクをむける。しかし名古屋高速経由で一宮から名神高速へ入ろうとしたが、お盆休みの名神下り線は鬼のような渋滞が始まっているのを知る。わざわざ渋滞の列に飛び込むのもどうよって、一宮ICを左に向かうところを右に東の方角へ走り出した。後は走りながらどこへ向かうか、ぐるぐる考えて「ちーん」と結論に。
佐久間ダム
そして着いた先が佐久間ダム。一宮から佐久間ダムまでのルート説明はややこしいが、兎に角、この佐久間ダムから富山まで県道を上がって、旧富山村の休日だけしか営業していない「幻の温泉」までのルートを思い浮かべた。


佐久間ダム
何度も立ち寄っているからありがたみが薄れているけど、この佐久間ダムは土木建築学の歴史上でも重要な遺産であり、ダムマニアの中でも「一級のダム」と評価されよう。当時10年かけても出来ないであろうと言われたのを「わずかに3年」で完成させた「戦後の土木建築の原点」といわれる。佐久間ダム駆体の真ん中あたりは、愛知県と静岡県の県境。ちょうど上の写真あたりに地図では県境を示す点線がひかれている。


愛知県道1号 ① 鰻樽トンネル 578m
静岡県佐久間町から始まる「静岡県道1号線は」小さな佐久間の町を乗り越えて佐久間ダムに至り、そしてダムの上を走ってダム湖右岸につながる。このダムを渡れば愛知県、そしてここから「愛知県道1号線」と名前が変わる。愛知県道1号線はよく知られた「酷道」「険道」で、愛知県の最も山奥を南北に走る。ここへは交通情報で最新の交通情報を仕入れてから向かうべきで、土砂崩れなどで通行止めになることしばしば。
ダムから次の集落までの20km、途中には幾つもの狭いトンネルとくねくね道、土砂崩れ後など秘境感たっぷりの景観が続く。今回はすべてのトンネルで写真を残して見ようと思いたつ。まずは一つ目、「鰻樽トンネル」は500m以上もあってぼんやりとした明かりのみのワイルドなトンネル。中はヒエヒエ、シールドが曇ってしまう。巨大冷蔵庫にバイクごと入ってしまったと思えるくらい「涼しい」、こりゃ気分良い。

② 丸山トンネル 473m
すぐにお次、「丸山トンネル」に入り込む。暗闇の中にかすかに出口の明かりが見える。全長473m、途中にはすれ違いのための待避所まであり、内壁はコンクリートで固めてある。もちろんここも涼しさ満点、上から落ちてくる湧き水に驚く。

③ 松島トンネル 594m
ダムに近い「鰻樽」「丸山」「松島」の3トンネルは、愛知県道1号線の中でも長さにおいて3大トンネル、そしてこの「松島トンネル」が最長だ。洞内はせまくって、対向車が来ても離合はできない。なので、トンネルに侵入する時には注意が必要。まっすぐであれば大体分かるけど、カーブしていたら対応車の存在は分かりづらい。侵入は、「一か八か」運だめしだ。
④ 松の平トンネル 369m
3大トンネルが続いたあと、ほどなく4つめのトンネルが出現。トンネル内は湧き水によって路面はベタベタ、あまりに気にしない小生だけど、気になるライダーにはバイクが汚れるのがいやだろうな。
佐久間湖
はるか諏訪湖から流れてきた天竜川は佐久間ダムで遮られ、満々と水を湛えている。濃い緑の水面は同じく緑一色のお山と同化していて美しい。県道はクネクネしながらも周囲のうっそうとした木々のために、周囲の展望はあまりよくない。このようにダム湖を見渡せる場所はとても少ない。
⑤ 湯の島トンネル 164m
小さな、といってもそれなりに長いけど 2つのトンネルが続く。山の向こうのおとなりに新豊根ダムがありそこからの水流をここに流して発電をしている。新豊根ダムと呼ぶより「みどり湖」といったほうが地元のライダーには分かりやすい。「湯の島トンネル」に隣接して、新豊根発電所へむかうトンネルも口を開けている。

新豊根発電所(J-Powerより)
地下80mの深ーい場所でタービンがぐるぐる回って発電をしているらしい。なんだかサンダーバードの基地みたいだ。夜間の余った電力を使って、佐久間湖の水を高所の新豊根ダム湖に揚水し、日中の電力消費が多いときに水を落とす仕組み。
⑥ 分地トンネル 171m
お次のトンネルはすぐ先にあり、発電所へのゲートが出来ている。発電所の敷地内を走っているような感じ。あの高圧線には数千ボルトの電流が流れているのだろう。

浚渫船(しゅんせつ)

川砂置き場
水量の多い天竜川は、このダムが出来て45年たち、すでに容積の30% が土砂で埋まっているらしい。なので、これを浚渫(しゅんせつ)することはダムの命を守ること。これを生業とした企業もあって、大きな浚渫船がこの日もダム湖を行き来していた。すくい上げた川砂はコンクリート建築に使われるなどの利用目的があって、平日であればそれを運ぶダンプカーがガンガン走っている。
⑦ 一の代トンネル 107m
佐久間ダムから集落のある富山まで、20kmほどあるのだが、このあたりでやっと1/3くらいのところまで走ってきた。これまでのトンネルはクルマ用のトンネルにしては妙に背の高い印象があったが、この「一の代トンネル」からよく見かける縦横の比をもったトンネルにかわった。
⑧ 滝原トンネル 123m
発電所や川砂置き場を過ぎたあたりから交通量が少ないのか、路面のガレ石や折れた枝など、路面の荒れた感じになってくる。相変わらず幅員は狭いので、時折突っ込んでくる地元の対向車には注意が必要。なんせ、GLばあさんはバック出来ないんだから。

愛知県道1号線
佐久間ダムから長野県との県境まで約30km、だいたいこんな道が延々と続く。このような待避所がところどころあって、サイドカーを止めることが出来るのこんな場所のみ。幅員が狭いので適当に停車して写真を撮るのも大変だ。

⑨ 萬丈トンネル 56m
これまでで最も短いトンネル。あっという間に通り過ぎる。手前の落石防止ネットには、落ちてきたがれきが堆積していて、ネットがパツパツになっている。いつかはこのネットを外して、がれきを掻き出さないと大変なことになりそうだ。
⑩ 滝原山トンネル 61m
10個目のトンネル。記事を書いている今だから「10個目」って分かるけど、走っているときには数なんて数えていられない。トンネルを沢山くぐってきたとしか、言い様がない。
左手の山には沢が次々に出現し、そのどれもが落石してきそうで怖い。大雨の後など地盤が緩いときには来ない方がよいだろう。こんな人気の無いところで土砂崩れにあったら、遺体すら当分見つけてもらえないだろうなあ。
⑪ 一本杉トンネル 104m

⑫ 下山中トンネル 49m
随分と走ってきて、富山の集落も近づいてくる。この2つのトンネル、入り口のコンクリートがまだ新しそうな感じ。修復などの手が入ったんだろうか。ここのトンネル形状もよくある形で、ダム近くにあった松島ダムなどの背の高いトンネルとは違っている。

対岸の夏焼集落
ずっと人の住まいを見ていなかったが、久しぶりに対岸の高所に数軒の民家があるのを見つける。道などなさそうな斜面に「へばりつくよう」に民家が立っている。地図で照らし合わせると、夏焼の集落のようだ。あの下には「夏焼トンネル」があるはずだ。

こちらの岸にも民家が見えてくると、そこは富山の集落だ。ここまで狭い道をクネクネ走ってきて、ここの広々とした景色にはホッとする。
熊打橋を渡るとすっかり人の気配がして安堵する。左折すると県道426号で豊根村役場方面へ抜けることができる。富山の住人にとっては最も重要な生活路だ。北に行こうが、南に行こうが、隣町まで20~30kmと離れている。

とみやま来富館
道の駅というには奥がましいが、富山で唯一昼食がとれる場所。愛知の山を幾つも乗り越えて初めて富山に来たときは、ひどく達成感があったし、こんな山奥で昼食がとれるんだって感動したなあ。

富山の集落
平成17年に豊根村に編入されるまで、ここは「富山村」といって人口わずか200人ちょっとの「日本で一番小さな村」として知られていた。愛知県の最も山奥、長野県と静岡県の3つの県境の集落だ。


富山区メインストリート
県道沿いのわずか500mほどが富山のメインストリート。ここに役場支所、郵便局、診療所、駐在所、集会所などなどすべての機能がならんでいる。ガソリンスタンドも開店休業?、人の気配が全くない。やっているか分からないような雑貨屋さんがあるが、食料品などの日常の生活物資はどうしているんだろうか。診療所は週に1回、それもわずか1時間ちょっとの診療を受けているだけで、救急対応など無理。心筋梗塞や脳血管障害で蘇生が必要になった急患は、救急隊員の蘇生術にすがって、30km以上離れた長野県の阿南国立病院あたりまで、1時間以上かけて走ってゆかなくてなならない。
⑬ 芦沢トンネル 58m

⑭ 細畑トンネル 33m

⑮ 佐太トンネル 161m
富山の集落を抜けてさらに県道1号を北上する。飯田線大嵐駅をやり過ごすと、もう民家は見当たらず再び人気の無い隘路を再び走るtことになる。やがて、トンネルを3つ抜ける。細畑トンネルは県道1号線のトンネル群で最も短いもの。佐太トンネルは愛知県道1号線の北端に位置して15番目のトンネル。道路トンネルのデーターベース、「穴蔵さん」によれば、愛知県内の酷道・県道のトンネルは全部で82あって、そのうち、15のトンネルが全長30kmほどの愛知県道1号線に存在している。いかにこの県道が険しい地域にあるかってわかるものだ。
落石防止ネット
北に向かう限り、ずーっと左手は山になり沢に出会うたびにこのような落石、倒木をみかける。ネットではこれ以上耐えきれない状態でここも早急に修復しなくてはいかんだろう。大雨や台風、冬の積雪などで、この愛知県道1号線はたびたび通行止めとなる。それでもこの道は生活路線、県はその都度、早期復旧に努めている。

愛知・長野県境 愛知県道1号

長野・愛知県境 長野県道1号
佐久間ダムから30km、いよいよ県境に到着。ここまでは愛知県道1号線、この先は長野県道1号線となって飯田市の外れまで続く。愛知県で最も深い山奥だ。愛知県道1号線は南において、静岡県道1号線と北においては長野県道1号線とつながり、天竜川沿いを南北に約90km続く。長野・愛知・静岡・県道1号とよばれ、揃って県道1号という「お役所にしては気の利いた」命名だ。
大嵐駅へ(おおぞれ)

鷹巣橋
ここまできたら、夏焼トンネルにも挨拶してこなきゃ。富山集落方向へ少し戻り、鷹巣橋で天竜川を静岡県側に渡る。このあたりで対岸に渡ることのできる唯一の橋だ。立派な吊り橋は昭和31年に竣工、佐久間ダムの下流で崩落した原田橋もこれに似た吊り橋だった。
飯田線 大嵐駅
橋を渡れば静岡県、飯田線の秘境の駅「大嵐」(おおぞれ)。この駅はトンネルに挟まれており、南に向かう大原トンネルはトンネルの多い飯田線においても、最長の5000mを超える。いつ来ても無人駅はひっそりとしているが、鉄道マニアには有名な場所で、「小和田」という秘境中の秘境の駅はこの隣の駅だ。
⑯ 第一夏焼隧道 99m
昭和30年の佐久間ダム完成に伴って、佐久間駅 - 天龍山室駅 - 大嵐駅間 (13.3 km) が廃止。佐久間駅 - 水窪駅 - 大嵐駅間の新線 (17.3 km) が開業した。大嵐駅の南には旧線路のトンネルが残っていて、それが夏焼トンネルだ。列車用のトンネルだから、背の高いもの。まずは手前の第一夏焼トンネル。
第二夏焼隧道 北側坑口

⑰ 第二夏焼隧道 1233m
そして本命の第二夏焼トンネルに突入、以前来たときよりも照明がしっかりしていて、恐ろしかった印象が薄らぐ。中央部分は素掘りのゴツゴツしたもの、とこrどころに待避所があって、列車が走った名残が残る。トンネルの中はびっくりするほどの低温。外気温35℃とは10℃以上の差があるんじゃないだろうか、半袖Tシャツでは寒い。
第二夏焼隧道 南側坑口
トンネルの向こう側に出ると、釣りの人たちの車が駐まっている。振り返って写真を撮ろうとすると、冷えたカメラが結露をおこしている。トンネルの脇道を上がってゆけば先ほど対岸から見えた夏焼の集落があるはずだ。

第二夏焼隧道 南側集落口
第二夏焼トンネルの先には、静岡県道288号がずーっと佐久間ダムまで伸びている。ちょうど走ってきた愛知県道1号の対岸にあたる。以前はクルマで走ることもできたそうだが、現在はすっかり廃道となっている。この県道288号を自転車と徒歩で走破した記録が、ヨッキれんこと平沼義弘さんの「山さ行がねが」に掲載されていて、小生はその面白さに引き込まれてしまったのを覚えている。小生の酷道好きも、これら記事からインスパイアされたような気もする。ヨッキれんさんの文章が面白い、行動力が素晴らしい、そして資料についてしっかり集めて研究している丁寧さも尊敬に値する。

湯の島温泉
泉質はナトリウムー炭酸水素塩・塩化物泉、PH8.1 のアルカリ泉、源泉は32℃の加温温泉、120L/minの豊富な湧出量。いわゆるヌルヌル系の美人の湯だ。小生が学生の頃にはこのような温泉はなかったはず。いつしか温泉があることを知り、立ち寄るようになった。しかし当時は平日もやっていたはずだが、現在は土日祝日のみの営業となってしまった。まあ、この山奥で平日営業していても、地元民しか使わないだろうし採算はあわないでしょうね。この日も猛暑日であったが、一風呂浴びると気分も爽快、さて、ここから名古屋の家までは十二分に遠いが、のんびり帰りましょう。岐阜板取の温泉に行くはずが、愛知の秘境温泉に来てしまったが、まあまあ、行く先は気分次第、バイクのお出かけはこうでなくっちゃ。
おまけ
今回はトンネルの長さなどのネタ元として、この穴蔵さんのサイトを活用させていただいた。全国の道路トンネル、道路元標などを丁寧にまとめ上げたデーターベースで、約20年にわたってアップデートされている。実際に現地で写真に収めている資料価値のあるサイトは多くの人に役立っているんだろう。これだけの資料集めを敢行した筆者の熱意に感服する。
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