
養老山脈と鈴鹿山脈
5月末、晴天に誘われてGLばあさんを引っ張り出してツーリング。行く先は1年ぶりの滋賀の廃村や林道たち、セローで行くべき所を「敢えて」サイドカーで挑戦。木曽三川公園近くからは、朝の日差しをあびて、手前に多度山の養老山脈、その奥に藤原岳の鈴鹿山脈の青々としたお山が美しい。これから鈴鹿山脈の向こう側を探検だ。


多度 鯉料理 大黒屋
多度大社に至る旧道は、味わいある街並でその筆頭が「大黒屋」。江戸中期からの創業で260年の歴史がある料理屋さんで、鯉料理で有名。門構えのむこうには、中庭まで見渡せるお屋敷が広がって、すばらしく雰囲気がいい。ランチであれば、2000円くらいから、会席コースも5000円ほどとお値打ち。お品書きをみると「うろこ」・「すり身団子の唐揚げ」・「鯉の薄皮の酢の物」・「南蛮酢」・「洗い」・「塩焼き」・「煮付け」・「鯉こく」などなど想像も付かないようなお品書きもあり。小生は川魚が得意ではないので触手が伸びないが、ここの鯉は臭みがないと評判のようなので、ランチでも挑戦してみよか。

多度大社
多度さんと地元の人からは慕われる神社、歴史は飛鳥時代からと古く、天照大神から生まれた天津日子根命が祀られている。ここで有名なのは「上げ馬神事」だろう。ゴールデンウイークの2日間、地域の子供たちを乗せた馬が高さ2mほどの崖を登って、その年の豊凶を占うというお祭り。


上げ馬神事
酒をのんだ(のまされた?)馬がずいぶん手前から助走をつけて、参道横の坂を駆け上がり正面の土手を乗り越えるわけだ。乗り手に選ばれるのは、地元の誉れで中学生の男子も乗り子として活躍する。
大学で研究医をしていた頃、この近くの救急病院で当直医のアルバイトをしていたので、毎度ゴールデンウイークのこのお祭りに巻き込まれていた。落馬すれば骨折は当たり前、ひどいと肋骨骨折から血気胸や内臓損傷、頭部外傷で救急搬送されてきた。練習前の落馬で尺骨骨折になってしまった中学生、同伴の父親から、「何が何でも明日の本番は走らせたいのでなんとかして欲しい」と泣きつかれたのが懐かしい。もちろん、本番出場は諦めたもらったけど。
養老山脈は名古屋の西に南北に走り、市街からも間近に見える。そのさらに西に鈴鹿山脈が東西南北に大きく広がっている。多度大社を超えれば、鈴鹿の山、そして今日の目的地はその山中だ。


藤原岳
日本300名山の一つ、このあたりで有名な御在所岳と似たような1200mほどのお山。カルスト地形のこの周辺、特に藤原岳は良質な石灰石が採取できため、80年前(1940年頃)からセメント工場が稼働し山を削ってきた。そして、50年先まで採掘の予定となっている。そうなれば、さらにお山の形は無残なものになるだろう。しかし、この産業が長年にわたって地元に富と雇用を生み出してきたことは間違いなく、一元的な評価は困難だ。

R365
鈴鹿山脈と養老山脈の間を南北に走るR365は、四日市から関ヶ原までを貫く主要道路。整備されて絶対的に交通量の少ないこの道は、ツーリングには最適な快走路。国道フェチにも気になる道路で、太平洋の四日市から関ヶ原、琵琶湖沿いを抜けて北陸の越前、最後は日本海につながる本州南北横断国道だ。
上石津町 岐阜県道139号
鞍掛峠へのR306を通り越し、上石津町からr139へ左折。鈴鹿山脈を乗り越えるルートでは、最北の五僧峠越えだ。新緑の黄緑色、針葉林の濃い緑、そして晴天のブルー、とても気分良し。


「白石工業株式会社」「紀二千六百年記念」
県道を牧田川にそって上がってゆくとやがて山が迫り渓谷となる。右手に石碑と石垣の通路が現れる。「白石工業株式会社」とかかれた先をのぞいてみることに。昭和15年に日本最初の天皇 神武天皇から数えて2600年を祝う行事が国事としてなされた歴史があり、その頃に作られたものだろうか。


味わいある石垣の小径を進んでゆく。なんだか、「千と千尋の神隠し」のオープニングみたいな景色。その先には牧田川の渓流と苔むしたコンクリートの橋がでてきた。鮮やかな日差しと緑の色、清流の青、空気もすがすがしい。

時山第1発電所
橋を渡った先には、廃墟の建物が見える。歩けば行けると思うけど、廃墟は苦手なので「ここ」から眺めて終了。調べると、100年前の大正10年に白石工業が作った発電所で、石灰工場に電気を送っていたらしい。石碑の紀2600年事業は、戦争前の逼迫した産業事情と大きく関わっていたはず。「日本隅々観光」さんが、この発電所を詳しく探索している。

幾利林道
時山の集落の手前、右にあがってゆく林道が幾利林道。ドイツ兵の落書きに会うために、GLばあさんで突入してみるが、こんな林道にサイドカーで「迷入」したライダーは小生が初めてだろうな。 落石、ガレなど、あるだろうけど、きっと大丈夫と信じて。

カルスト地形だから、白っぽい石(石灰石)がとても目立つ。割れやすく欠けやすいので、土砂崩れなどの災害が容易に起こる。林道にも何カ所かで土砂が流れ込んでいる場所に遭遇。落石に関しては、普通に、至る所に、大小さまざまな岩が転がっている。

時山第2発電所
峠をのりこえてゆく高圧線、こんなアングルで電線に近づくのは珍しい。向こうの鉄塔が立ってる先が五僧峠。


五僧峠
時山多賀林道を登り切ると五僧峠、昔は10軒以上の集落であったが昭和50年頃に廃村、いまでは朽ちた廃屋が2軒ほど残るのみ。この林道できたのが10年前、それまでは時山から五僧に行くのは人道しかなかった。

霊仙岳南側のガレ場

権現橋 がれき
五僧から芹川にそって下ってゆくと、両脇から岩壁が迫るように、谷はどんどん深くなる。右手は霊仙山の大きなガレ場、いつ石灰岩の落石があってもおかしくない。毎年、このあたりは落石で通行止めになることが多い。ガードレールがあるとがれきを排除するのがやっかいになるから、敢えて川側にガードレールが無いんじゃないかと思っている。


権現谷 元行者窟
深い谷底に日差しが差し込んで新緑の緑が一層映える。朽ちかけた橋を横目に、対岸には鳥居のある小さな沢がある。案内板には「元行者窟」と書かれていているけど、対岸からはこの程度しか見えない。しかしこの鳥居の奥には、洞窟があって祠が祭られているらしい。これを訪ねた人たちの記録が残っている。
小生にはこのような暗いところ、狭いところ、無理。単独行はもちろん、同行者がいても行けないだろうなあ。ヒルが怖いし、カマドウマなどの昆虫も苦手だし、ヘビやムカデなどに遭遇したら、気を失うかも。


権現谷 行者橋
権現谷でも最も深いところがこの橋の辺り、大岩壁が左右から迫り、おどろおどろしい景観。天気が良ければ爽快、雨でも降っていれば恐ろしい毎度の撮影スポットだ。完全な伏流をなっていて、このあたりの川底には水が全く見えない。がさがさと木々の中で音がしたと思ったら、サルが数匹姿を現した。驚かさないでくれよ〜〜。
「たまに一言のあしあと」さんの記事は、よくよく探求されていて読み応えばっちり。自分の足で現地を見て回り、興味があれば現地で調べたり、役所で資料をみたり。その行動力には感心するし、資料としてとても参考になる。


河内の風穴
権現谷を過ぎると霊仙の廃村を抜け、芹川は急に川幅を広げる先に、河内の風穴がある。涼しい洞窟の中もよかろうと、今回はじめて訪ねてみた。駐車場を管理しているおばあさんは、集金箱を屋外において、家の中から声を掛けてくれる。接触をさせるためらしいけど、こんな山奥で人もまばらなところなのに、コロナ対策、そこまでするの?!


洞窟入り口
受付で500円を納め、小さな沢沿いに登ってゆく。登りやすいようにスチール製の通路が作られているが、これがメッシュ形状なので、下が透けてなかなかスリルがある。まだ上がるの??て思った頃に、山の斜面に入り口が見えてきた。

階段を下に降りてゆくような傾斜で、入り口が開いている。しゃがんでかろうじて頭をぶつけないほどの狭さ。強烈な冷気が吹き上げていて、説明では11〜12度。外気が30度くらいの真夏日であったから、その涼しさは半端ない。
入り口の先は、しゃがんで歩けるくらいの空洞、そしてその先に大きな空間が待ち受けていた。小さな体育館くらいの広さや高さがありそうだ。汗ばんだTシャツに洞内の冷気は寒いくらい。秋吉台などの鍾乳洞のような造形は見当たらず、ゴロゴロとがった石ばかり、どこからか「ゴウゴウ」と水の流れる音がしている。

はしごを乗り超えて最深部の2階に向かう。ぬれたはしごは滑りやすくかなりスリリング。スニーカー以外の靴では無理だろうな、パンプスやスカートの女性には手前で待っててもらうことになろう。

風穴 観光ルート最深部

2階の先はほそくなっていて、観光客はここまで。しかし、洞窟はさらに続いていて現在分かっているだけでも、3000m以上の延長があるらしい。地底の川や湖、大きな空間などなど、今後の調査が待たれるそうな。

今日の後半は入谷の廃村と濃厚な「白谷林道」が待ち受けている。すっかりクールダウンして、ふたたび走り出す。多賀の廃村エリアとほぼ一致した流域を持っている芹川は、透明感がすごい。伏流になって姿を隠したり、エメラルド色の淵を見せてくれたり、特に日差しの強いこの日は最高に美しい姿をしていた。
GL1200サイドカー 20 2/2 に続く
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