パッケージをみれば、メーカー名は「ICMホールディング」で、メイド イン ウクライナ。所在地は、首都キーウとある。「Kyiv」ウクライナの綴り方で、ロシア侵攻後は、世界的にその呼び方が浸透した。以前は、ロシア語の「キエフ」だったよね。

He 70Gは、ドイツ ハインケル社が自国のルフトハンザ航空向けに製作した「郵便機、旅客機」で、高速が売りだった。1933年のデビュー後、7つの速度における世界記録を樹立。今回再現したのは、1936年にドイツ国内線に就航していた機体「D-UNEH」号。高速に着目したドイツ空軍は、軽爆撃機や偵察機として派生型を増産した。

飛行機のプラモで、1/72ってのはメジャーだろうな。国内メーカーと比べても、パーツ数は多くて、細かな部分も再現。

キットは爆撃型と同じ型を用いているため、旅客機の乗客ドアを造設する必要あり。大胆にもドア用の切り抜きを指示される。ドリルで何度も穴を空け、これを繋いで切り抜く。

用意されているドアがピタリとはまるように、調整。このあたりは、国産メーカーではあり得ない組み立て。これぐらい出来るでしょ、的な上から目線(^^ゞ。

スタンドは含まれていないから、自前ストックの中から1/72サイズのスタンドをピックアップ。

翼の中央、重心はこのあたりとして、スタンドの受け側を組み付ける

上下の翼を接着。スキマが生じないようクランプしてひと晩。

機体内部を筆塗りで塗装を済ませ、胴体を接着。スキマが生じないよう、すりあわせを十分におこなった。

組んでしまうと、見えなくなりそうな機体内部。操縦席ひとつ、無腺手も乗ってたはずだけど、どこに座るんだろうね。後部には、向かい合わせで4名の乗客シートがあった。

翼と胴体と接着。組み上がりのスキマは許容範囲、ウクライナ製プラモの精度、侮れず。要所にパテを使って調整。

ヤスリでシコシコ、パテを削りなだらかな接合にしあげる。

最後にキャノピーの透明パーツを接着。しみこみタイプの接着剤を慎重に用いる。はみ出したりしたら、透明パーツが汚れてしまう。

キャノピーのフレーム塗装、まずはマスキングテープを切り込んでみるが、、、、枠が細いので、上手く切り出せない。マスキングテープによる下準備は断念。

次いで、マスキングゾルにも挑戦したが、やはり切り出す枠が細くて、マスキングしたい部分まで取れてきてしまう。キャノピー枠の塗装は、マスキングによる方法は無理と判断し、最後の最後に、手塗りで仕上げることにした。飛行機の製作になれてるモデラーの人たち、1/72の小さな窓わくをどうしてるのか??

プラサフで下地完成、上塗りにとりかかる。

組み立て図に指示のあった外装色は、「Lichtgrau RLM63」という色。近似色を探して、零戦などの「明灰白色」を流用する。

ここで、ぐぐっと、工程が進んだ写真となる。すでに全体色が塗られ、一部デカールも張られている。じつは、外装で肝心の胴体側面の黒いストライブデカールを張ろうとしたが、劣化で使い物にならず。。。さて、どうしようと、困ってるの図。ストライブが再現できなくては、このキットはゴミ箱行きか(>_<)。1週間ほど、製作中止、、、。

諦めかけたが、もうちょっと頑張ろうと、側面のストライブを塗装で再現することに。再度、マスキングテープで養生して、デザインナイフでストライブを切り出す。

まっくろくろすけになったけど、大丈夫か?

白いストライブの再現に悩んだが、1mm幅ほどのマイクロテープを流用してみた。最初からペイントでいくと決めていたら、これをマスキングテープにして、塗り分けが出来たはず。

カットしたら、それっぽくなったじゃん。これで、がまんがまん。

なんとか貼れた翼のデカールも、ちょっと触ると剥がれてくる、、、デカールがひどく劣化していたんだね。このあたりも、国内メーカーのデカールは、信頼感があるよね。欠けた部分は、筆塗りでなんとか補修。

デカールがこれほど脆くなっているのが分かっていれば、はじめからこの補修剤を用いればよかった。これは、痛んだデカールの表面にぬることで、皮膜を追加してデカールが割れるのを防ぐ。

補修剤のおかげで、のこりのデカールはちぎれずに張ることが出来た。機首部はつや消しの指定ではあったが、全体にクリアをのせないとデカールが取れてしまうので、やむを得ず、この上からつやありクリアーを塗装した。

塗装の最後は、キャノピーの塗装。マスキングを断念したので、エナメル塗料の筆塗り。コシのある面相筆で、まっすぐに線を引く。、、、つもりだけど、どうしても手描きで均等な線を描くのは難しい。

問題の稲妻デカール。黄ばんでもないし、見た目いけそうな気がしたんだけどね。古い模型を作るときのもっとも大きな問題が「デカール」だろうな。

最後の最後に、とても華奢な足回りを作る。塗装は済ませてあるので、クリアボンドの接着力のみで組み上がる。詳細な再現はカッコいいけど、日本メーカーだったら、差し込み穴などしっかりと設計されてるだろうね。

足回りのボンドで一晩ねかせて、晴れて「完成」。いなずまデカールがダメになったとき、諦めてゴミ箱行きもあり得たけど、最後まで完成してよかったねえ。

ドイツ国内の主要航路で活躍したハインケル。他国の旅客機よりも高速で、特にこのG-1型は、強力なロールスロイスエンジンに換装されていたので、国際線にも導入された。

ベルリン空港(当時の動画より)
資料を探していたら、He70の当時の動画が出てきた。飛行場には、複数のHe70が並んでいて、累計30機ほどが運用されていたらしい。1934年から1936年までルフトハンザ航空で活躍していたが、1937年には、その機体すべてがドイツ空軍に徴用されてしまった。

美しい楕円型の主翼は、高速性能にも一役買っていた。当時のハインケル社の飛行機は、この翼型を採用することが多かった。後に、ドイツ空軍の主力爆撃機となった、ハインケルHe 111ともよく似たシルエットとなっている。ジブリの「風立ちぬ」に登場する、ガルウイングの機体も美しい「楕円翼」をもっていたね。楕円翼といえば、宿敵イギリスの「スピットファイアー」も思い浮かぶ。ハインケルの高速性能に目を付けて、イギリスでも採用されたとか。

特長ある主脚を見せたかったので、足だし状態で組み立てた。となれば、着陸態勢を再現、フラップを「開」の状態にしてみたよ。手前味噌だけど、キレイな機体だなあ。主翼、尾翼、胴体のバランスが優雅。これで速い機体だったんだから、美しさは機能に現る。

先回、取り組んだのは、ロシアの模型メーカーで、こやつはウクライナ製。奇しくも因縁の対比となったが、お国柄がプラモの作りに現れている。大味なロシア製、繊細なウクライナ製といったところか。ロシアの潜水艦とウクライナの旅客機ガ、同じケースで展示。コレゾ、「呉越同舟」だ。

ウクライナ ICM ホームページ
このHe70のキットはすでに廃盤となっている。当初は飛行機が中心であったが、ICMでは、ミリタリーなどの分野もキット化され、東西分裂していた頃の飛行機など、珍しいモノもあるので、またいつか作る機会がありそう。