
中島 夜間戦闘機 月光11型甲 1/48 タミヤ

行きつけの床屋の主人からの、「プラモをつくってほしい」という依頼。ほぼ手つかずの状態で、引き受けたのが、夜間戦闘機の月光だった。なぜに、月光を選んだのかは、聞いていないが、なかなか渋い選択。んっじゃ、組み立ててみましょう。タミヤの1/48 傑作機シリーズのNo93 タミヤはこのシリーズは、相当に力を入れているのが、そのシリーズ数だけでも伺える。20年前に発売され、当時は定価4510円で、現在は絶版。

組み立て図は、タミヤらしい丁寧で分かりやすい図柄と明瞭な塗装の指示。海外メーカーのそれと比べると、月とすっぽんだね。

まずは、主翼上下の貼り合わせ、クランプした状態で、浸透タイプの接着材を充填して固着。浸透タイプといっても、材質を強力に融解して癒合させるので、思いのほか、接着力があるんだよね。さすがタミヤと思わせるのも、こんな場面。ピタッとスキマをつくらず組み上がるのが気持ちいい。

夜間戦闘機の主武装、斜め機関銃3門。それをささえる台座が鳥かごのように芸術品。合理的な欧米に対して、いかにも日本的な緻密で手間のかかった作りだと思う。


苦手な人間さんもそれっぽく塗装。1/48だと、表情もつくれるのだろうが、苦手な小生はフレッシュカラーで筆塗りしておしまい。局地戦となったこの頃は、パイロットの腕に日の丸の縫い込みは必須だったんだろう。アメリカ兵と間違えられたら、えらいこっちゃ。

組んだら隠れてしまいそうな機内の部品も丁寧に塗るりわけ。見えなくても作り込む「男気」??。

キットにはスタンドが含まれていないので、見栄えを考えてスタンドを製作。ストックしてあるスタンドを流用。プラの丸棒を軸として、機体に5mmの穴を穿って、差し込む仕組みにしてみよう。

手持ちの5mm丸棒に、プラ板を重ねた軸受けを作成。するっとはまる大きさに丸い穴を微調整。

当時の日本機の機内色は、「青竹色」というかなり派手なブルーだ。実機では腐食防止のクリアブルーをアルミやジュラルミンの機体に塗っていたようだ。

パイロット周りの計器板なども、デカールを使って細かく再現される。このあたりの再現は、さすが国産、さすがタミヤ。

左右の機体を貼り合わせる前に、内部のパーツを組み付ける。後部席の後ろに、5mmの穴を開けつつ、手製の「メス型」プラ製受け軸を接着。機首の酸素ボンベなど、機体を貼り合わせたら絶対に見えないのに、組み付けるこだわり。。。いいねえ。

左右の機体も、浸透型の接着剤で合体。やっと、これで外装の塗装など、先に進める。

斜め機銃。キットは、月光11型甲で、斜め機銃を3つ積み込んだ強化型。特に追加された機銃は、100発の携行弾で補強されている。30度の角度で固定され、操縦席の照準で狙いを定めた。

操縦席と開放する機銃部分をマスキング。全体の塗装の準備。

海軍機の濃緑色はメーカーによって、微妙に緑色に違いがある。三菱製の零戦などは、中島製の月光と同じ「濃緑色」でも、やや青みが強い。ちゃんと、缶スプレーでもそのあたりを区別して、商品化されているのもすごいよね。

全体をサクッと3度塗りで、ミドリムシにする、ついで、カウル内部をシルバーで塗装。海軍機の多くが背面を灰白色で塗られていることが多いので、全身濃緑色はめずらしい。

お決まりの敵味方識別の黄色い帯も、デカールで再現される。出来が悪かったら、塗装で仕上げようと思ったけど、ソフターなどでぴったり貼れた。

実在の機体にしたかったので、もっとも派手めな「黒鳥四郎少尉」の機体を再現。右側の機体尾部には、B29 6機に撃墜と 2機の撃破を示すマークがいかしている。外装のデカールを貼り終えたら、表面をクリーンにして「半つや消し」のクリアーを全体に塗装して、デカールを押さえ込む。

やっと概ねの塗装が終わったので、パーツを組み込んでいきましょう。まずは、主脚を取り付けるが、スリットに差し込むような設計となっており、強度的にガッチリ脚がくっつく。こんな設計も作り手目線でうれしいね。

脚が付いたら、収納カバーや増槽タンクや尾輪をクリアーボンドで接着。

推進型のエンジンの排気管も、2つのパーツで再現される。まるでパズルのように組み上がるので、これを設計したメーカーの人は、満足してるだろうなあ。

機体の概ねが出来上がり、いよいよエンジンを取り付ける。前もって、ナセルをセミグロスブラックで塗装しておいた。

お次は操縦席周りの工作にいこう。パイロットと射撃手をお尻に接着剤を付けて、シートに固定。

飛行機のキャノピーは枠の塗り分けがやっかいだ。マスキングゾルやテープで抑えた上で、ナイフで切り出すのだが、ナイフのキズが入ったり、漏れ出しとか、ストレスが多い。ちょいと調べたら、キットに合わせて、すでにカット済みのマスキングシートが販売されているのを知る。

タミヤ用に切られているので、まるでオーダーメイドのように、きちんと貼れる。しっかり抑えて、ウラ全体をマスキングすれば、あとは塗装をするだけ。調べると、海外のキットを含め、この便利なマスキングキットは、多くの有名な飛行機のキットに用意されている。

今回は、スプレー缶を用いたので、2度塗りくらいの厚みで塗装。マスキングを外せば、スッキリ、クッキリ枠塗りが完成。あとは、ワンコインほどの価格が妥当かどうかの判断だね。

依頼主の床屋の主人は、風防も脚もすべてオープンという希望であったので、風防も開の状態で固定。

緑一色では、全体がのべーっとしている。そう、モールドに影を入れてアクセントを付けましょう。グレーとブラックのエナメル塗料を極薄めて流し込むようにモールドに色をいれてゆく。

あとでエナメル溶剤で拭き取るので、はみ出しても全然かまわない。下地がラッカーやアクリルで素材が違うからできること。

背面も同様に「墨入れ」をおこなう。墨入れによって、単色の機体も、ビシッとメリハリが出てくる。
長ったらしい装置は、いわゆる国産のレーダー。終戦2年前に開発が始まり、試作として夜間戦闘機の月光と銀河に搭載された。設計上では、400mから3000mの索敵能力があるとされたが、使い手の技量、作動不良などで、使い物にならなかった。唯一、3000m先のB-29の探知に成功した例があるのみ。上下2本から電波を発信し、左右のアンテナ2本が受信した。


横須賀航空隊の倉本飛曹長と黒島少尉のペアが搭乗した「月光11型甲、ヨ-101」を再現。東京空襲に飛来したB-29をひと晩で5機撃墜した殊勲により、全軍布告の表彰を受けた。左尾部同隊には、撃墜6機、撃破2機のアメリカ軍の星マークが刻まれている。

斜め機銃の様子はこんな感じ。B-29の下方に忍びよって、20mm機関砲を撃ち込む。20mmをまともにくらえば、さすがの巨体も打ち落とされた。

モノクロールな実機の写真を背景に、それっぽく写真に残す。強そうな空冷双発エンジン、日本機らしい優雅な機体。

完成したんで、壊しちゃうまえに、依頼主の床屋の元に月光を持参。ついでに、あたまもやってもらおう。

たいそう喜んでもらえて、作った甲斐あり。床屋の陳列棚に飾っていただきました。床屋さんに夜間戦闘機「月光」の組み合わせは、まったく関連が無いけど、プラモ好きなお客さんがみたら、「おっ」って思ってもらえたらいいねえ(^^)。